ルートヴィヒ・ミース・ファン・デル・ローエ(Ludwig Mies van der Rohe、1886年3月27日 – 1969年8月17日)
ドイツ出身のモダニズム建築の代表的な建築家。「Less is more.」(より少ないことは、より豊かなこと)や「God is in the detail」(神は細部に宿る)などの言葉が有名である。ラーメン構造の高層ビルを得意とし、ユニヴァーサル・スペースと呼ばれる考え方を提案している。
【経歴】
ドイツのアーヘンで生まれ、地元の職業訓練学校で製図工の教育を受ける。1906年にブルーノ・パウルの事務所に、1908年にペーター・ベーレンスの事務所に勤め、1912年より独立。その後、ドイツ工作連盟に参加し、ヴァルター・グロピウス、ル・コルビュジェ、ブルーノ・タウトらと共に、実験的集合住宅を建設している。1929年のバルセロナ万博でモダニズム建築のスタイルを確立し、1930年よりバウハウスの校長として教鞭をとる。
1933年にナチスによりバウハウスが閉鎖され、1938年にはアメリカに亡命する。その後1969年に亡くなるまでアメリカで高層ビル(シーグラムビル、レイクショアドライブ・アパートメント)など中心に作品を残している。
【Less is more】
Less is more(より少ないことは、より豊かなこと)はミース・ファン・デル・ローエが提唱した標語である。より少ないとは、装飾などの表層的な要素と、空間構成などの内的な要素の両方の要素減らし、単純化することを指す。単純化することで様々な外的要因に耐えうる建築(ユニヴァーサル・スペース)を計画し、より豊かな空間が生まれるとい思想である。後に、ポストモダニズムの先駆者ロバート・ヴェンチューリにより「Less is bore(少ないことは退屈なこと)」と批判されるが、ミースのモダニズム建築を表す有名な標語である。
【バルセロナ・パビリオン】
1929年に行われたバルセロナ万国博覧会でミースが設計したドイツ館、バルセロナ・パビリオンが建設された。3枚の大理石の壁と鉄の柱、ガラスで構成された建物は壁と屋根のシンプルな計画でモダニズム建築の幾何学的な構成を表現し、一切の装飾を排除することで空間構成のみを抽象化している。より素体に近い空間構成に大理石や水(浅池)などの自然素材を用いることで、より空間と素材の関係を明確にしている。またガラス開口が建物の内部と外部を繋ぎ、周辺環境との関わり演出している。
このような手法は、分厚い壁で閉鎖的な組積造の古い建築から脱却しようとするモダニズム建築の思想を表現し、モダニズム建築の発展に於いて重要な位置づけになっている。
【ユニヴァーサル・スペース】
ユニヴァーサル・スペースは内部空間を限定せず、自由に使えるようにすることで経年による使用者の変化や用途の変更に耐えうる空間を目指すという考え方で、ミース・ファン・デル・ローエが提唱した。鉄筋コンクリートや鉄骨の建築が発達することで、広い内部空間が設計できるようになった。特にオフィスなどの空間は使用者によって自由に平面プランを変えれるよう、広いワンルーム空間をパーティションなどで自由に仕切れるようにした。
【バウハウス】
バウハウスは1919年にドイツのヴァイマルに設立された、工芸・写真・デザインなどの美術・建築に関する学校。グロピウスやミース・ファン・デル・ローエが校長を務め、ドイツ工作連盟の理念に影響されている。バウハウスではデザインを規格化・数値化することで合目的性・経済性・科学性を重視させた。このような古くからの美的観念の変革を進め、ドイツ国内のみならず世界的に大きな影響を与えることになった。
参考図書:世界で一番美しい建築デザインの教科書
ミースの言葉や作品に関し幅広く紹介し、解説を加えている書籍です。ミース建築の哲学や形態言語を理解するための入門書的な内容です。作品集と一緒に買えば更に分かりやすいと思います。
参考図書:建築家の講義 ミース・ファン・デル・ローエ
講義と書いてありますが、ミースの実作に対するインタビューが掲載されています。本書では晩年のミースが自らの言葉で語られており、彼の設計に対する意思を深く読み取れます。他の書籍で作品等を理解している方はより深く読み解ける一冊です。
【作品】
フリードリヒ街のオフィスビル案(実現せず) 1921年
参考図書:ミース・ファン・デル・ローエ
ミースの作品集は絶版などで手に入るものが少ないのですが、その中でも入手しやすく写真が多めの本です。解説が加えられており、一般図書としても読めるので初心者にオススメの本です。
映像作品:ミース・ファン・デル・ローエ[DVD]
ミースの自伝的な映像作品です。彼の作品と人物を紹介しているのですが、作品を映像として見れるので、作品集よりも見やすく分かりやすいと思います。