『妹の肖像画を持つ自画像』
ロザルバ・カリエラ(Rosalba Carriera, 1673年1月12日 – 1757年4月15日)は、ヴェネツィアの画家。パステルのみで作品を描いたことで知られている。
【概要】
ロザルバはヴェネツィアで公務員の子として生まれた。裕福な家庭ではなく子供のころから母の手伝いで内職をしていた。その後、画家からパステル画の教育を受け画家の道を歩むことになる。
彼女は生涯パステル画のみを描き続けた。油彩画などが主流であったにも関わらずパステルに拘ったのは、最初に教えてもらった画法であるのも一つの理由ではあると思うが、彼女の表現したかったロココ美術の精神に画法が良く合っていたのが大きいであろう。
この頑なに押し通したパステル画の技術はロザルバ以前にもあったが、色彩が限られ習作を描く時に使われることが多かった。しかし練習用の技法からちゃんとした作品になりえるまで発展させたことでもロザルバの功績は大きい。
ロザルバは若くして国内外から注目される画家として活躍し、彼女のファンは多かった。特にアウグストス三世は150点近い作品を収集しておりロザルバの最大のコレクターであった。45歳の頃にはフランス財界の大物ピエール・クロザに招かれ、2年間パリで作品制作をした。その当時に時代の重要人物を50点余り描き残している。同時期に王立アカデミーの会員に迎え入れられるなど全盛を極めた。
しかし、内向的な性格だったロザルバは社交の場が多いパリの生活が苦しくなりヴェネツィアに帰国した。その後も生涯独身を貫き通し、晩年まで妹と暮らしながら作品制作を続けた。
【絵画データ】
1715年作
パステル・紙
71cm×57cm
収蔵場所 ウフィツィ美術館(イタリア・フィレンツェ)
表情などから40歳の頃の自画像だと考えらている。彼女の愛した妹ジョヴァンナの肖像を手にしている。彼女の描く肖像画は誇張が少なく、実際の顔立ちなどをそのまま描いていた。また当時の彼女が使用していたパステルなどの画材が画面下に置かれているなど、制作の様子も伺える。
パステル画の名人らしく、色彩の豊かさや陰影の表現は巧みである。特に洋服の肩あたりの光の照り方は見事と言えよう。その中で顔の周りだけフワッと明るくなるような背景の光や、輪郭のぼやけた柔らかい表現はパステルの長所を生かした表現になっている。