『2人の弟子のいる自画像』
アデライード・ラビーユ=ギアール(Adélaïde Labille-Guiard, 1749年4月11日 – 1803年4月24日)は、フランスの肖像画家。
【概要】
アデライードは宮廷御用達の服飾品店を営んでいた。彼女は恵まれた環境ではなかったが、持ち前の画才を生かして画家の道を歩み始める。当時は制作した作品を披露する展覧会は限られており、発表の場が多くなるように王立アカデミーを目指して活動を続けていた。そんな折に、ある展覧会で注目を集めたことにより念願のアカデミー入りを果たした。
アカデミー会員になった1783年の同日にヴィジェ=ルブランも同じく会員入りをしている。ヴィジェ=ルブランは当時から最も有名な女性画家で、18世紀の女性画家の中で最も重要な人物である。アデライードは高名なルブランを凌ぐとも評されるほどの画力を持ち、二人は生涯ライバル関係にあった。
特にアデライードの評価が高かったのは、王族や名士の自画像を描く時に誇張のない表現だったことである。画面の人物を理想化したり美化することなく、性格や心理を丁寧に表現する技量はルブラン以上と言われている。
アデライードは20歳の時に税務関係の仕事をしているルイ=ニコラ・ギヤールと結婚したが数年後には離婚している。その後、長らくの独身生活を経て51歳の時に恩師と再婚した。しかし、54歳の時には他界しており彼女の生涯はほとんどが独身生活であった。
【絵画データ】
1785年作
油彩・カンヴァス
210.8cm×151.9cm
収蔵場所 メトロポリタン美術館(アメリカ・ニューヨーク)
アデライードがアカデミー入りした2年後に描かれた作品。大型の作品を前に、汚れるのを気にせずに着飾って制作をしている。後ろには愛弟子が二人控えている。当時は女性画家の地位が低く、アカデミー会員に女性4人までといった上限があるなど差別的な扱いを受けていた。アデライードはこの差別的な体制を批判し続け、この作品でも優秀な女性画家を見せつけるかのように弟子たちを描いている。また画架の前で着飾っているのも、女性画家に向けられた偏見への皮肉であろう。