歌川国芳の連作「金魚づくし」の作品9種を紹介します。国芳の得意とした擬人化の代表例で、人間のような豊かな動きや表情を持った金魚たちは必見です。

『酒のざしき』
本図は、酒宴での席を描いたもので、一匹の金魚が三味線を弾き、それに合わせ踊る二匹の金魚。ひれを巧みに使った仕草になんとも愛らしい。
本図は、水中の金魚が雨をしのぐ、というおかしな作品。タイトルも「にわかあめ」と「あめんぼう」をかけたシャレになっている。

『そさのおのみこと』
本図は、日本神話に登場する素戔嗚尊(すさのおのみこと)を描いた作品で、八岐大蛇(やまたのおろち)を退治する場面を描いている。戦う素戔嗚尊の足下にいるのは奇稲田姫(くしなだひめ)。
江戸時代、船頭は鳶職と並んで、最もいなせな職業とされていた。国芳が描く金魚の船頭は、ひれをまくり上げた姿に男気を感じる。
本図は、江戸時代中期に登場したシャボン玉売り(玉屋)が町中をめぐって子供達にシャボンを売っている様子を描いている。水泡をシャボン玉に見立てるアイデアは国芳ならでは。
「火事とケンカは江戸の華」と言われるように、火事が多かった江戸の町には火消し達が大活躍で町の人気者だった。本図の金魚たちも威勢よく火事場へと向かう姿は、水中であることを忘れてしまう。
百物語は、江戸で流行った怪談会のことで、百本の蝋燭を火に灯し、怪談話が一つ終わる毎に一本火を消していく。最後の明かりが消えると闇の中から化け物が現れるとされている。本図は、まさに最後の話が終わって、化け猫が出てきた瞬間を描いている。
本図は、「トンビに油揚げをさらわれる」ということわざがあり、まさにその油揚げを取って行かれてしまった瞬間をとらえたもの。大口を開け呆気にとられる姿は笑いを誘う。
お盆の頃になると、江戸の街角では、少女たちが手をつなぎ、横並びになって歌い歩く姿が見られた。ぼんぼん(盆々)あるいは「盆唄」と呼ばれた童謡は、夏の風物詩だった。国芳の描いた子供の金魚たちもおおきな口を開けて仲良く手をつないで合唱している。
以上が金魚づくし9作品と簡単な解説です。浮世絵はシリーズで描かれたものが多いので次回もまた他の作品を紹介したいと思います。